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2010.12.28

2009.7.1 "sc journal" 掲載blog 51

QUOTES - 言葉 -
昨晩、仕事場のパソコンの前に座り、「そろそろあがろうかな~」と考えながら友人のホームページを眺めていた。
この友人は、80年代の終わりから90年代の始めにかけて、インダストリアル・デザインを学んだ美術学校の1年先輩で、現在もロンドンでフリーランスのデザイナーとして活躍している。
ロンドン生まれの香港チャイニーズ(当時はこう表現していたが、今もそういう表現をするのだろうか...)だった彼は、ART&DESIGNを学んでいた事もあって「日本文化」に強い関心を持っていて、1年遅れて入って来た私に何かと親切にしてくれた。
そんな彼のホームページには、作品や彼自身の紹介の他に、彼に少なからず影響をあたえた「言葉/QUOTES」が書かれている。
デザイナーはもちろん、さまざまなジャンルの作家や哲学者などが、主に「ものづくり」に関して発した言葉達...。
久しぶりに目を通すと、とても新鮮で私の心に直接届くものが多く、「QUOTESを読んで感銘を受けた事」「地球規模で何かと複雑で、難しい時代だからこそ、こういう言葉に接する事で気持ちがリセットされる...」などの感想を、数行の短いメールで彼に送った。
彼からの返事には、(返事と言っても、私からの「ショートメッセージ」に比べ、「これは何かのレポートか?」と思わせるボリューム感。正直困る。)簡単な感謝の言葉と、英国での不況がいかに深刻で出口が全く見えてこないなどの現況報告、その反面で私が以前「いつか欲しい」と言っていたデザイナーの椅子に、ロンドンのオークションで40,000ポンドの値が付いたから早く忘れるように、などの忠告がユーモアたっぷりに書かれており、そして最後に「ホームページにQUOTESを掲載した事に関しては、良いと言ってくれる人も居たけど、pretentious(プリテンシャス:ニュアンス的には「いかにも格好つけてる感じ」)だと言って良い印象を持たない人も居たよ」と書かれていた。
本であったり、雑誌記事であったり、歌や詩、講演で聞いた言葉や友人とのなにげない会話の中での言葉であったり...、誰でも、何らかの「言葉」に助けられたり、道筋をつけてもらったりした事があるはずである。
だから、何となく行き詰まった時に頼れたり、リセットさせてくれる言葉を自分の中に持っている事はとてもすばらしいと思う。
もし私がクライアントで、デザイナーを選ぶ立場にあったとしたら、私の友人のように、指針となる「言葉」を持っているデザイナーを選ぶのではないだろうか。
それは、単に「ニーズに応えて造形する」というだけでなく、「言葉」を媒介に思考が広がり、フォルムを導きだすための「コンセプト」にたくさんの要素が詰まっていそうな気がするからである。最終的に「大人の事情」がそこに加わって、いろいろとそぎ落とされる事になっても、もともとたくさん詰まっているから... 残ったものは「魅力的」なものになりそうな気がするからである。
だから、彼がホームページの「QUOTES」で「言葉」をオープンにする事は、決してプリテンシャスな行為ではなく、良い言葉を教えてもらえたら嬉しいし、また、彼にとって「営業的効果」としても理にかなっていると思う。
それにしても本当に、思わずうなずいてしまう、この夏Tシャツにプリントしたいと思わせる言葉ばかり...。(うの)

090701