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2010.12.27

2008.11.21 "sc journal" 掲載blog 34

帰って来た小包
仕事場の本棚にずーっと置いてある小包がある。
コンピュータに向かって仕事をしていても、少し視線を動かすだけて目に入る場所に置いてある。というか飾ってある。
美術学校時代の知人J(生粋の英国人)が、同窓で学んでいたこちらもはやり知K(ドイツ人)の妹さんと結婚した、という話しを人づてに聞いて『結婚祝い』として用意し、送り、そし「受取人転居先不明」で戻って来た小包。
今回、棚からおろしてみると、紙もテープにもほどよい「パリパリ感」が出ており、返送期日を見ると 13/5/96 (1996年5月13日)とあるので驚いた。なんと12年前である。
中身は「江戸切り子のペアグラス」。過去何度か「開けて自分達で使おうか...」と思った事もあったが、何となくそのままに。
開けられない理由としてはちょっとしたセンチメンタリズム。ひとつの小包が成田から飛行機に乗ってヒースロー空港まで行き、その後ロイヤルメールの赤いトラックでソーティングオフィス(配送センターのような場所)まで運ばれ、一度は北部ロンドンにある街の一棟のフラットの前まで行き、受取人が見つからず、また飛行機に乗って帰って来たかと思うと... 開けてしまうよりも、そんな、ほぼクリアに想像できるルートやしばらく暮らしていた街並み、知人達の顔、その場所で過ごした時間みたいなものがひとつの小包に詰まっていそうな気がして... 旅の行程で貼られたラベルやメモ書きみたいなものをそのままの形で残したいと思ったのである。
それにしても、せっかくのセンチメンタルヴァリューにキズを付けるようなのだが、切手を見るとこの小包のロンドン往復の旅費は2,060円。改めて郵便っていうのはすごいシステムだと思う。
英国は郵便システムの生まれた国としても知られているが、当時は(今はどうかわからないが)日に2回、必ずポストマンが配達にやってくる。心待ちにしている手紙がファーストポスト(1度目の配達)で届かなくても、セカンドポスト(2度目の配達)で来るかも...と望みを繋ぐ事が出来た。郵便料金も「速達」などの特別な便ではなく、「普通郵便」も翌日届く1st classとあまり急がない2nd classに分かれていて料金が違ったりしていた。
それに比べ... 私の住む町では、数ヶ月まえに気が付いたのだが、日に一度きりの郵便配達が夕方の5時頃来るようになった。これって普通に考えるとまさに「ありえない」事だと思う。例えば、仕事の書類や資料を郵便で送付してもらった場合、届くのは翌日の早くて夕方の5時。「そろそろ仕舞いにしようかな~」なんて考えても良い時間ではないか。大切な書類のやり取りを宅配便に持っていかれる...さもありなん、である。
でもね、本当は「郵便でメッセージが届く」ほうが雰囲気はあると思うのです。ロンドンまで行って帰って来た小包を見ていると特にそう感じるのです。(うの)

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