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2010.12.27

2008.9.20 "sc journal" 掲載blog 25

ショップでの言葉...
ロンドンやパリでショッピングをすると...
たいがいの場合において、ショップスタッフが“hello” もしくは“bonjour” といった挨拶の声をかけてくれる。
これらの言葉はあくまで「挨拶」であるから、スタッフもショップに入って来た人に顔を向け、前の晩によほどイヤな事があったり、その日の朝に好物のベーグルが売り切れてしまっていない限り、さりげなく微笑んでくれたりする。するとこちらも、特別に礼節を重んじる日本人という訳ではなくても、心持ちが軽やかになりほおを緩めて、“hello” もしくは“bonjour” とはにかみながら返事を返す。
こんなさり気ない「一言」と「微笑み」のやりとりから入ることで、そのショップで過ごす時間が良いものになるから不思議である。次に続く「何か必要な事があったら言ってくださいね」という言葉に、軽い微笑みと会釈で応えると、その後しばらくはショップ内に自分と商品だけの空間が出来るような気がする...。そこには心地良い「対話」が存在し、「繋がり」を感じる。
今の日本においては多分、「いらっしゃいませ」が主流である。そしてこの一言がトリッキーなのだと思う。
どう探してもこの言葉に対しては返す言葉が見つからない。という事は、最初の一言から「対話」が生まれないのである。
だったら、比較的聞く事の多い「いらっしゃいませ、こんにちはー」というのはどうだろう。この場合はせめて、「こんにちは」の前に一呼吸おいて、気持ちを込めてほしい。棒読み調に繋げられた日には、そのあまりにもマニュアルライクな「サウンド」に、そうでなくても最近めっきり萎え気味の「購買意欲」が跡形も無く消えてしまうのである。
日本の文化において多分、この「いらっしゃいませ」は本来「かけ声」のようなもの、だったのではないだろうか。
あくまで人々の気を引くためのかけ声であって、この「いらっしゃい!」に引かれて来た人に対して、売り子はお客様ときちんとした、時に小粋な「対話」をしてきたはずである。
ロンドンやパリでは、そのショップで物を購入するしないに関わらず、よほど無愛想な人間であるか、そこでイヤな思いでもしない限り、こちらから「bye...」もしくは「au revoir...」と言い、挨拶を交わしてショップを出る。
日本では、その店で物を購入するしないに関わらず「ありがとうございました。」の声に送られて店を出る。まー、これだってそれほど悪くはない。気持ちがこもってさえいれば。
日本も「こんにちは」にしたらどうだろう。大切な人に挨拶するように、目線と微笑みを交えて。(うの)

080920