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2010.12.27

2008.10.24 "sc journal" 掲載blog 30

素朴な豊かさ...
しばらく続いた秋晴れが終わり、久しぶりに雨降りとなった朝、すぐ近くにある小学校に観光バスが止まっていた。楽しみにしていたであろう秋の旅行。
おそらく子供達にとっては「なんでだよ~。」っと言った感じだろう。前の日に天気予報を見て、てるてる坊主を作っていた子供もいたはずである。
「かわいそうだけど、こればっかりはね~。」と話しながら車で打合わせに出掛けた。
打合わせの相手は、私達が勝手に「師」と仰いでいる作家兼デザイナーのT氏。私とパートナーが以前在籍していたデザイン事務所の上司でもあり、私達二人が「ものづくり」に関わる仕事をさせていただいている事の「原点」的な存在である。今はお互い別々の事務所を立ち上げて仕事をしているが、いつでも気さくに、こちらの要望を聞いてすばらしい文字やイラストを描いてくれる。
そして、打合わせも終わり事務所を出ようとした私達に、「これ、このあいだ野焼き(土器を作って露天で焼き上げる事。T氏が主宰する子供のお絵描き教室の恒例行事)した時に壊れちゃったやつだけど、持って行っていいよ。」と、子供達が手でこね、形作ったであろう小さくて素朴な土器と、破片を手渡してくれた。そして、私達を見送りに出てくれたアプローチに咲いていた秋アジサイをおもむろに摘んで器に差し、「ほら、こんな風にしたら、お宅にぴったりじゃない...。」とひと言。
子供達が野焼きした土器、可憐な秋アジサイ、さりげない心遣い... 。
モノや季節との関わり方や、暮らしの中で感じるささやかな豊かさみたいなものについて考えさせられた瞬間だった。
秋の雨に濡れた感じがとても良い、豊かさや美しさのエッセンスの詰まった「素朴さ」。
”まだまだ遠い、師の背中” なのである。(うの)

081024b