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2010.12.27

2008.10.3 "sc journal" 掲載blog 28

芸術の秋
Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」に行って来た。
芸術の秋...という事なのか、 平日のお昼前にもかかわらずとても混雑していた。
ジョン・エヴァレット・ミレイの代表作である「OPHELIA/オフィーリア」は、ロンドンに暮らしていた頃、カレッジと予備校の都合5年間アートスクールに通っていた事もあり、何度かテートギャラリ-で鑑賞した事のある作品だ。
話は少し飛ぶが、私が通ったアートカレッジはロンドンの中心部にあり、歩いて数分の距離に大英博物館があったり、お昼休みにちょっと出掛けられる距離にナショナルギャラリーがあったりした。大英博物館もギャラリーによってはほとんど人が居ない場所があり、諸々に煮詰まった時ふと出掛けると、石に囲まれたひんやりとした静寂の中で、時が止まったような、不思議な感覚になれる場所だった。
「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」に話を戻すと、作家としての栄華と軌跡を作品を見ながら知る事ができる、それはそれは素晴らしいものだった。 でも、でもなのである...。
せかされるように移動するいくつもの肩越しに観る「OPHELIA」は、以前テートで観たそれほど感覚的に迫ってくるものが無かった事は否めない。
名画に限らず芸術作品を鑑賞する場合、興味をそそられる作品の前に立ち、しばらくぼーっと眺めるのが良いと個人的には思っている。作品と対面する自分とそれを取り巻く空間。温度と湿度が完璧に管理されたギャラリー、コツコツと石の床を鳴らす足音、他の作品の前で囁き合うカップルのくぐもった声...。
キュレーターとして、作品や作家についての学問的な知識を得る事も必要とされる場合を除けば、芸術作品を鑑賞するという事は、作品そのものだけでなく、感覚/感情的に、見た時の空間や空気感みたいなものまで、一緒に思い出の中に取り込める事が醍醐味なのだと思う。(鑑賞の仕方は人それぞれなので、あくまで個人的な意見として。)
べつに「OPHELIA」を見る目的でテートギャラリー行かなくても、ついでに「OPHELIA」も観て来る事が出来た。今考えればとてつもなく贅沢な環境に身を置いていたと思う。
おそらく、芸術イベントとして「ジョン・エヴァレット・ミレイ展」を捉えれば、非の打ちどころは無いのであろう。でも、芸術の秋を満喫したいのであれば、作品の知名度に関わらず、気になる美術館の「収蔵品・常設展」を見たほうが良い、と思う。日本の美術館はどこも「結構な作品」を持っているはずである。
以前、「好きな作品が遠方の美術館にあって、時々観たくなると時間をとって、新幹線に乗ってその作品だけを観に行く....。」という話を、スタディオクリップの企画スタッフの方から聞いた事を思い出した。自分も、どこか飛行機に乗らなくても行ける場所で、そういった作品と出会いたいと思う。
という事で、今回のイメージは、ミレイ展を観た後でランチに寄った「LES DEUX MAGOTS PARIS」を一枚。(うの)

081010